『赤い糸』
「赤い糸、って知っている?」
唐突に竜乃が言った言葉に、摩子は面食らった。
「何って?赤い糸?」
竜乃は、こくんと頷いた。
「そりゃあ、知っているけれど、どうしたの、唐突に」
摩子の問いかけを無視して、竜乃は小指を一本立てた。
そして、じっと摩子を見る。
「何?」
「摩子さんも立てて」
摩子は、よくわからぬまま、自分も小指を立てた。
「今、この二本の小指の間には、見えませんがきっと赤い糸があります」
竜乃はそう言いながらじっと、二本の指の間辺りを見つめる。
と。
逆の手で鋏を持って、その間をジャキリ、と切った。
「何するの!?」
摩子は、予想外の行動に声をあげた。
「竜乃さんは、そんなに私と縁を切りたかったの?」
「そうじゃないの」
ちょっと微笑んで竜乃は答えた。
「もうちょっとそのまま指を立てておいて」
そう言って、摩子の小指の下の空間を摘むそぶりを見せた。
まるで、切ってしまった糸を摘むかのように。
何をするのかと摩子が見守る中、竜乃はその見えない糸を引っ張り、
自分の小指に結びつけるような仕草をした。
そして、摩子に、さ、貴女も、と言う。
摩子はわけがわからないまま、それでも竜乃と同じことをしてみせた。
「これで良いの?」
竜乃はニッコリと笑った。
そして、頷く。
「これで、二本もの糸で私たちは繋がったのよ」
摩子は竜乃を見つめた。
「ね、きっと私たちいつまでも一緒よ」
囁く様に、竜乃は言う。
摩子は、そっと、そんな竜乃の小指を撫でた。
自分の赤い糸が行き着く、愛しい人の指。
「ええ、きっといつまでも一緒ね」
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5000番を踏まれたhimeさんのリクエストに答えました。
「あかいいと」をお題としたssです。
目には見えないけれど、でも何かで繋がっているのは素敵。
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