「ね、綾さ、熱、あるでしょ」
テレビを眺めていたら、蓮実にそう図星を指され、綾はぎくりとした。
『fever』
3日前、試験も終わり、今二人の通っている高校は試験休み中。
久々に蓮見は綾の家に泊まりがけで遊びに来ている。
綾は先ほどから、見たい番組があると言って、ベッドに腰掛け、テレビを見ている。
そんな綾とテレビを交互に眺めているうちに、蓮実は気がついたのだった。
――熱、あるみたい。
「ちょっとね」
綾は大人しく認めた。
熱が出ているのはちょっと前から自覚していた。
ただ、せっかく蓮見が遊びに来てくれているというのに、そんなことで台無しにしたくなかったのだ。
「全く平気」
軽く、綾は強がりを口にした。
「平気じゃないよ」
そんな綾を蓮実は見据えて。
「そんな時は無理せず寝るべき」
言い聞かせるように、言葉を投げた。
「ね、寝ときなよ」
蓮実の言葉に、綾は、うーんと曖昧な返事を返す。
視線は相変わらず、テレビの方。
蓮実の言っていることは重々わかっているつもりだったが、
それでもやはり、今は大人しく寝たくなんかなかったのだ。
少し重い沈黙。
少しして、蓮実が近付いてくる気配を、綾は感じた。
何、とそちらを見上げる。
と。
視界が、ぐるりと回った。
手首を強く掴まれているのを感じる。
身体におちる、蓮実の影。
すぐ近くの蓮実の顔越しに、真っ白の天井が見えた。
何故だか分からないけれど、綾はぎゅ、と目を閉じた。
「大人しく、寝ておきなさい」
耳元で、囁くような命令がする。
綾は今度は小さく頷いた。
よし、といって蓮実は綾の上からのく。
それから3秒待って、綾は目をあけた。
「突然押し倒すから、びっくりしちゃった」
そう言って、照れたように笑う。
「そうでもしないと、綾、聞いてくれないんだもの」
に、と蓮実は笑みを返した。
「さ、病人はとっとと寝る」
「御免ね、せっかく遊びに来てくれたのに」
「そんなこと気にしないでよ。私たちの仲でしょ」
「うん」
頷いて、もう一度照れたように綾は笑った。
「寝る、ね」
「うん」
「蓮実も適当に寝てね」
「うん」
「じゃあ、お休み」
綾はそう言って、大人しく布団をかぶった。
「お休み」
優しい蓮実の声色が、心地よく響いた。
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