『HappyX'mas』
12月の24日。
その日は、終業式が行われた後、自由参加のクラスでのクリスマスパーティーが行われていた。
壁にはヤドリギのリース。部屋の中央には樅の木のツリー。
そして楽しそうにゲームに興じる少女たち。
そんななか、千鶴はいささか疲れて、壁際の椅子に腰をおろした。
そしてぼんやりと、まだゲームで戯れている友人たちを眺める。
見ているだけでも気分は高揚し、十分にクリスマス気分は味わえた。
どのくらいそうしていただろうか。
ふと、笙子も輪から外れ、近づいてきた。
「笙子」
千鶴はちょっと微笑んだ。
それに対して、笙子も笑顔で軽く手を振る。
「早々に座っちゃって、どうしたの」
「ん、ちょっと疲れちゃった」
「お年寄りねぇ」
笙子はそう言って、友人たちの輪の方を見遣り、又続ける。
「ま、こうしてみているだけでも、十分楽しそうだけどね」
「実際、楽しいよ。しかも見てるだけなら疲れない」
千鶴も笑いながら返した。
そんな千鶴を優しい笑みで笙子は見る。
そして次の瞬間。
ふわり、とキスを落とした。
千鶴は驚いたように少し目を見張った。
「どうしたの、急に」
笙子はまだ優しく微笑んだまま、千鶴の上方を指差した。
「ヤドリギの下にいる人にはキスして良いんだよ」
千鶴は振り向いて壁を見た。
そこには。
赤や緑のリボンで飾り付けられた、ヤドリギのリース。
呆気にとられたように、千鶴はそのリースを見つめていたが、やがてクスクス笑い出した。
「気づかなかった」
「だと思った」
二人は目を見合わせて、笑いあう。
そして。
同時に、口にした。
「Mwrry Xmas」
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